第72章 悋気
「あれ……?」
赤司さんに誘われて、お部屋に遊びに来たものの、涼太やさつきちゃん、紫原さんや青峰さんが来る気配はない。
どこか、別の場所で集まっているのかな?
現在、トランプ大会……というか、ババ抜き大会が行われている。
ポーカーフェイスの黒子くんに、
頭脳派で判断が早い緑間さん、
読みが鋭い高尾さんに、
何故か勝てる気がしない赤司さん……。
ここに私が加わっていいものかと思うほどのメンバーだ。
ラッキーなことに、私は最初にあがることができた。
「あがりなのだよ」
続いて、高尾さんからカードを引いた緑間さんがあがった。
「真ちゃんずりー!」
「実力なのだよ」
そう言って眼鏡の位置を直した緑間さんが、席を離れて私の隣に立った。
「さて、そろそろ俺もあがらせてもらうかな」
先ほどまで最初にあがっていた赤司さんが意味深にそう言って、高尾さんにカードを引いてもらうように促す。
「赤司サンから引くの、俺イヤなんだけどー!」
高尾さんの悲鳴が響く。
案の定、赤司さんが持っていたババを高尾さんが引き当て、うなだれる彼。
「ありがとう、高尾くん」
赤司さんは黒子くんからカードを引き、さらっとあがってしまった。
朗らかな笑いが部屋を包んでいた。
「……貴女のような人が黄瀬と付き合っているのは、不思議なのだよ」
「え?」
隣に立っていた緑間さんが、突然不思議な事を言うのであっけにとられてしまう。
やはり、涼太をよく知る人からしてみたら、私みたいな女と付き合うというのは、不可解なんだろう。
よく分かっているつもりではあるけれど、正面きって言われると、流石に落ち込む……。
「やっぱり……変、ですよね」
「成績は悪いし、昔はチャラチャラと軽い部分があった。黄瀬は貴女との付き合いで得たものが多いようだが、神崎さんにメリットがあるとは感じられないのだよ」
「そっ、そんな……!」
緑間さんが言っていることは、事実とは真逆の事だ。
実際には、私と付き合っていて涼太には何のメリットもないのに……。
「緑間、神崎さん、面白そうな話をしているね」
「高尾くん、すみません。ボク、あがりです」
赤司さんが私たちに話しかけてきたのと同時に、黒子くんが、手にしている最後のカード2枚を、山へ放った。