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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気


「あぶっ、ねぇ」

「す、すみません……」



う……最悪だ。

あと数秒で外灯が点いたのに、なんて悪いタイミング。

足元が暗くて、踏み出した先が大きな段差になっている事に気付けなかった。

青峰さんがそれに気付いて私を助けてくれた……んだけど。




強く腕を引かれた反動で……
今、私は彼の腕の中にいる。
転ばないように、支えてくれたんだ。


おまけに……

…………

……今のは事故。事故。



「……気をつけろよ、暗いから」

「ほ、本当にすみません……ありがとうございます」

慌てて、嗅ぎ慣れない爽やかな果実のような香りのする胸を離れて、距離を取った。

こんなところ、誰かに見られたら絶対に誤解される。

2人とも、今起こったことには触れない。
敢えて、触れない。

気まずい空気だけが流れる。
当たり前だ。どうしよう。

どうしよう。

「あの……青峰さん、すみま」
「気にすんなよ、大したことじゃねえし。
ほら、いつまでもこんな所にいたら濡れんぞ」

「……はい」

良かった、青峰さんも気にしてないみたい。

私がドンくさいばかりに、こんな迷惑をかけてしまって、本当に情けない……。


「いい加減戻らねーと、いつまでも帰ってこないんじゃ、黄瀬なんかも気にしてんだろ」

その名前に、ドキリと心臓が跳ねた。
ああ、涼太に見られなくて、良かった……。

やましい事なんてないけれど、事故だけれど……でも……彼が見たら、いい気はしないと思うから。

青峰さんとはそれから目を合わせられないままだ。

「私、先に戻りますね」

部屋に戻ろうと、自然と早足になっていた。

夕食の時間、さつきちゃんも待たせてしまっているだろう。

聞きたい事もある。

部屋の前にさしかかると、前方に涼太とさつきちゃんの背中が見えた。

2人は、親密そうに寄り添いながら、歩いていた。



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