第72章 悋気
どうしよう……。
私が行ったら……ダメ、なのかな?
でも、きっとさつきちゃんは待ってる。
でもでも、2人の邪魔をしちゃう?
でもでもでも、さつきちゃんは困るはず!
でもでもでもでも、困らないのかも!?
えっ、本当はどうして欲しいのかな!?
ああああ、どうしたらいいのか分からない!
「みわ、行くっスか?」
そう言って涼太は手を差し伸べてくれるけど、行き先は大浴場ではなく、緑間さんたちのところだろう。
「え、あの、私は……」
何がさつきちゃんのためになるんだろう……
決め兼ねて戸惑っていると、後ろから近づいてくる足音に気が付いた。
反射的に振り返ると、そこには浴衣姿の青峰さんが。
「あれ青峰っち、もう出たんスか?」
「おい赤司……オマエ、風呂、混浴なんて言ってなかったじゃねえか」
その頬には、くっきりと手形がついている。
「そうだったな、すまない。
何かトラブルがあったのか?」
「……なんでもねーよ」
すんなり謝られ、更に事情を聞かれたのが気まずかったのか、青峰さんは何も言わずに部屋へ入っていってしまった。
「なぁんだ、早かったっスね、青峰っち」
「予想外だったな」
「しかしまぁ、マンガみたいな手形つけて……
桃っちも素直じゃないっスねえ」
楽しんでいるような2人は放っておいて、私は大浴場へ向けて駆け出した。