第72章 悋気
予定通り、15時には全員が宿のロビーに集合していた。
用意された客室は4室。
3人部屋が1室と、2人部屋が3室だ。
「部屋割りどうするんスか?」
「あー……クジでいいんじゃね?」
涼太の問いかけに、青峰さんはそう言って鞄を探る。
男性陣の部屋割りは、青峰さんが取り出した、街頭で配っていたであろうポケットティッシュに入っていた広告の裏を使って公平にアミダくじで決めた。
結果、涼太は青峰さんと。
赤司さんは黒子くんと紫原さんと。
緑間さんは高尾さんと。
私は、もちろんさつきちゃんと同室。
「みわちゃん、お話いっぱいしようね!」
「うん!」
旅館は、通常営業している本館と、私たちが宿泊させて貰う離れのような別館がある。
赤司さんによればこの別館は、関係者がいつ来ても利用出来るよう、常に空けられているものらしい。
別館には本館とは別に独立した食事処や温泉があり、本館の宿泊客と顔を合わせるような事がない。
つまり、貸し切り状態。
なんて贅沢なんだろう……!
客室も隣り合わせとはいえ、部屋と部屋の間は広く開いている。
こんなグレードの宿、今後の私の人生の中で利用することがあるんだろうか……?
一同は、ひとまずそれぞれの部屋に荷物を置きに向かった。
部屋に入ると、和風な宿の造りとは裏腹に、客室はベッドやソファが置いてある、洋風なものだった。
「さつきちゃん、ベッドどっち使う?」
「じゃあ、窓側使っていい?」
「いいよ!」
私は廊下側のベッドへボスンとダイブすると、柔らかい布団が身体を受け止めてくれた。
「すごい……高級な感じがする……」
心地よいスプリングの感覚に、すぐに眠ってしまいそう。
「みわちゃん、もう温泉入れるんだって! 行かない?」
「行く行く!」
訪れた眠気を振り払うようにして、さつきちゃんと大浴場へ向かった。