第71章 笑顔
私の両腕は涼太の片腕に簡単に捕まり、あっという間に自由を奪われた。
胸を撫でた後、更に高度を下げた指が私の中心を探るように擦る。
「っ……」
鎮静化した筈の疼きが、何倍にもなって襲ってくる。
『きーちゃん? 聞いてる?』
咄嗟に両腿を閉じて彼の指が侵入するのを防ごうとしても既に遅かった。
涼太の指が、私の中に……。
かえって固定するように締めてしまっている事に気付き、足の力を抜けば涼太の手は更に深くまで入って来て。
「涼、太っ!」
さつきちゃんに気付かれないよう、携帯を挟んでいる側とは逆側の耳に向けて、ごく僅かな声で叱責する様に名前を呼んだ。
「桃っち、ちゃんと聞いてるっスよ、大晦日にどうするって?」
涼太はそんな事もまるでおかまいなし。
楽しそうな声に、目が回りそうになる。
どうしよう、このままじゃ……
『きーちゃん、何かしてるところなら、落ち着いてからでもいいよ? また後でかけ直そうか?』
さつきちゃんも、異変に気付いてる。
でも中を擦ってくる指は、緩むことがない。
涼太が止まる気配が全くない以上、もうこうなったら、電話を切って貰った方がいい気がする。
「涼太、お願……いっ、も、切って」
『きーちゃん?』
「ん? ダイジョーブ、ちょっと準備してるだけっスから」
『準備? なんの?』
「ん〜……祝勝会の前夜祭的な?」
水音が、電話の向こうのさつきちゃんに聞こえてしまいそうで……。
でも、巧みに動く指は弱い所を押すのをやめてくれなくて。
「っ、だめ、りょ」
涼太の肩口に縋り付き、懇願しても彼は微笑むだけだ。
『じゃあ、用件だけ。大晦日に皆で集まって、去年のテツ君の誕生日の時みたいに、ストバスでもやろうって、赤司君が』
「いいっスね、了解」
『みわちゃんも今回は来てくれるかなあ?』
「みわ、ここに居るっスよ。
みわ、行く?」
中を探る指は、緩むどころか激しく擦りあげ、小刻みに振動を与えてきて……
も、だめ……
「っ、ーーーーッ……!」
「みわ、イくって」
『ホント!? 良かった〜!』
絶頂まで押し上げられ、真っ白になった視界が色を取り戻すと、目の前では涼太が妖しい笑みを湛えていた。