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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


今まで、優勝トロフィーがあった前方の視界は、いつの間にか薄いグレーに変わっている。

……これは、天井……?


今、何が起こったのか。
気がつけば背中には冷たいベンチの感覚。

……押し、倒された?
なに? どうして?

「え、あれ」

視界に涼太が入ってきた。

「……"欲望"」

「へ……?」

欲望?

「手首へのキスの、意味」


「っ……!?」

息を呑んだのが先か、その呼吸ごと涼太に呑み込まれたのが先か。

目の前が、真っ青に染まっていた。

いつの間にかウィンドブレーカーを脱いだ涼太は、ユニフォーム姿だ。

海常ブルー。
3年間、一緒に過ごした青。

中央には、4番の背番号。

でも、降り注ぐのはその静かな青とは対照的な熱い熱い口づけ。

私を抱きしめる腕は、出逢った2年前よりもずっと逞しく、強い。

「ぁ、まっ」

「みわ……」

蕩けるような甘さで私を呼ぶ声。
たった一音で、身体の自由を奪っていく声。

その優しい声とは比較にならないほど、獰猛な瞳から放たれる視線が、身体の隅々までを焼いていく。

でも、最後の理性が私を押し留めていた。

ここは部室だ。
もしかしたら、誰かが来るかもしれない。

バスケ部のメンバーじゃなくても、他の部の人が前を通るかも……

そんな事を悠長に考えている間に、2人分の体重を受けたベンチが軋み、ギシリと音を鳴らす。

ジャージの首元から侵入してきた彼は、鎖骨を甘噛みするように刺激してきた。

「だめ、涼太……こんなとこ、じゃっ……」

ピリリと襲い来る甘い疼きに逆らうように、必死に彼を押し返そうとその厚い肩に手をやっても、ピクリともしない。

その手は呆気なく大きな手に捕まって、絡め取られた指は冷たいベンチに押し付けられた。


「みわ……熱い、熱いんだ……
オレの熱、鎮めて……」

濡れた声が、理性を溶かしていくのをハッキリと感じる。

涼太の熱が、ジャージ越しにも伝わってくる。

服の中に侵入して来た手が、アツイ。

「待って、ねえ、涼太っ」

抗えない。

「みわッ……」

少し掠れた声で、苦しそうに切なそうに私の名前を呼ぶその唇に。

触れただけで汗ばんでしまうほど高い身体の温度とは対照的な、先の冷えた指に。

抗えない、……よ。





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