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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


各部の部室を横目に、バスケ部の部室を目指す。

年末のこの時期のこの時間まで練習をしている部活は、流石にないらしい。

少したてつけの悪くなったドアをキィと開けると、いつもの男臭さに一瞬たじろいだ。

「はは、夏よりマシっしょ?」

涼太は笑いながら部室に入っていく。
……確かに、涼太の誕生日にここに足を踏み入れた時は、もう少し嫌な感じがあった気がする。

一足遅れて足を踏み入れ、窓際のテーブルへと向かう。

夏にはインターハイ準優勝のトロフィーが置いてあった位置に、ウィンターカップの優勝トロフィーやカップを並べていった。

「ほあー……壮観だね……」

なんだか、しみじみと思う。
ああ、優勝したんだ……。

あの瞬間、あまりに現実味がなくて、既にハッキリ記憶にない。

「優勝、したんスね」

「うん……」

「これでオレたちも、引退か」

引退……そうだよね。

なんだか、言葉にすると急に寂しくなる……。



「みわ、3年間オレたちを支えてくれて、ありがとう」

突然柔らかい声色に変化したのを感じて涼太の方に向き直ると、彼はその切れ長の瞳を優しく細め、微笑んでいた。

「こちらこそ、こんな素敵な夢を見せてくれて、ありがとう……」

お礼を言いたいのはこちらの方だ。
最高のチームで、頂上を見せて貰えたんだから。

「みわ」

涼太の大きな手が私の手を掴む。

その高い体温に、心臓が跳ねる。
冷え性の私の手が、冷たいだけ?

「なに……?」

涼太の唇が、手の甲に触れた。
手よりもずっと、熱い唇。

「え、え……?」

「手の甲へのキスは、"敬愛"なんだって。
みわに贈るのに、ピッタリでしょ?」

吐息が肌を滑り、ぞくぞくと痺れるような感覚が全身を包む。

「……っ」

這うように上がっていった唇は、リップ音を立てながら手首で止まった。

「手首へのキスの意味、知ってる……?」

その妖艶な雰囲気に、息を呑む。
手首へのキスの意味……?

「知らない、けど……」

途端、視界がぐるりと反転した。



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