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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔




「準備はいいか?」

「はい、お願いします」

涼太と2人で乗り込んだ監督の車が、会場を後にする。

車のメーカーは詳しくないからよく分からないけれど、国産メーカーではないというのだけは分かった。

コンパクトカーの部類に入るのだろう、この車では監督も涼太も、どことなく窮屈そうに見える。

写真撮影の後、OBの先輩方とあれやこれやと話していた涼太は、車に乗り込むなりぐっすりと眠り込んでしまった。

やけにアッサリとした挨拶だったけど、いいの? と聞いたところ、「祝勝会もあるし、次はセンパイのチームでインカレ制覇するから、今はこれでいいんスよ」だそうで……。



ウィンターカップ優勝の祝勝会は、年始に急遽開かれる事になった。

年末だと、流石にこんなに急なスケジュールでは参加者も集まらないだろう。

会場を押さえるため、あちこちに電話していた監督は、面倒と言いながらも嬉しそうだった。

「黄瀬は寝とるのか」

「あっ……はい」

涼太は私の右肩に頭を預け、寝息を立てている。

監督に話しかけられても、ピクリともしない。

身体の力が完全に抜け切っているところを見ると、熟睡しているみたい……。

当然だ。
これ以上ないくらい、全てを出し切った試合だった。

「神崎」

「はい」

「黄瀬は、いずれ日本代表のユニフォームを着ることになる」

「……」

日本、代表……。

「お前の進路希望は担任から聞いた。
お前が黄瀬についていくつもりなのかは知らんが……よく考えておけよ」

世界で活躍する涼太に、ついていく覚悟……

「……はい」

バスケの事だけ考えていられる時間は、今日で終わり。

これからは、全く違う生活になるんだ……。




今日の試合について監督と話しているうちに、車は海常高校の門をくぐっていった。

「部室棟の前でいいか」

「はい、ありがとうございます」

そう言ってから、しまったと気づく。
涼太だけ、男子寮の前で降ろして貰えば良かった。

男子寮は、学校から少し歩く。
この状態では、その距離でも身体にこたえるだろう……。

でも、今更Uターンして下さいとも言えない。

車は、部室棟の前に停車した。



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