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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


「……行ってくる」

そう言って私の肩に触れた手は、とても冷たかった。

でも、その瞳を見て思わず目を見開く。

その輝きは……。


それを確認する間も無く、試合再開のブザーが鳴った。


「い、行ってらっしゃい!」


背を向けたままひらりと振られた手が、ライトを浴びて瞬いたように見えた。


頼もしい背中たち。
私の言葉なんて必要ない、強いひとたち。



この極限状態で、どの選手も既に精神が肉体を凌駕している。

あと、たったの60秒。


目の前を走り抜けていく、青いユニフォーム。




今までの膠着状態が嘘のように、次々とゴールに吸い込まれていくボールたち。



残り、30秒。



これぞ、シーソーゲーム。

海常が逆転すると、今すぐに終了のブザーが鳴って欲しいと願う。

そうこうしているうちに誠凛にまた逆転され、頼むからもう少しブザーは鳴らないでくれと祈る。


激しい点の取り合いに、見ているこちらも呼吸すらままならない。



残り、5秒。



怒号にも似た掛け声が、コート内に響いていく。



「足を止めるな!!」

「まだ、いける!」

「絶対に諦めるんじゃねぇ!」


もう、どの声がどちらの学校の誰のものかも分からない。

彼らも、ひたすら大声を出して、くずおれないように精神を保っているだけだ。





「勝つぞ!!」


そう吼えたのは、愛しいひとの声、だった気がする。




もう、時間がない。




放たれたシュートが、リングに向かって弧を描く。






そのシュートは、試合終了のブザーと共に、リングへと吸い込まれていった……。






うそ……。


ブザー……ビーター……。






高らかにアナウンスが流れる。






『試合終了ーーーー!!


ウィンターカップ史上初、熾烈な延長戦の末の、劇的なブザービーター!!



頂点を勝ち取ったのは……!!』




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