第71章 笑顔
いよいよ。
緊張感の迸る中、戦いの火蓋は切って落とされた。
しかし、TIP OFFと共に、誠凛の黒子くんのパスを受けた火神さんの流星のダンク(メテオジャム)で先制点を奪われてしまう。
試合開始直後、ほんの数秒の間に披露された派手なプレイで、観客席が沸き上がる。
大丈夫。
たかが2点だ。
まだ、試合は始まったばかり。
それよりも恐ろしいのは、このまま、流れごと持っていかれること。
グッと観客を引き込む強烈なダンクに、早くも会場は誠凛応援ムードになり始めている。
それを誰よりも分かっている涼太は、逆襲とも言えるプレイで"お返し"をしてみせた。
笠松くんのノールックパスを受けた涼太が、ディフェンスなどものともせず、流れるようなドリブルでコート中央を駆け抜ける。
その長い脚が、力強くフリースローラインで踏み切り、跳んだ。
ガコォンという鈍い音が響き、ボールはゴールに吸い込まれていく。
足の間にボールを通すスルー・ザ・レッグ後にレーンアップシュートを決めるという、まるでNBAのダンクコンテストのような光景に、観客も言葉を失う。
それは誰のコピーでもない、彼のプレーだった。
涼太は、コートの中で舞うように相手を翻弄した。
点を取るだけではない、なんて華やかなバスケ。
こう表現するのは適切ではないかもしれないけれど、その動きに誰もが目を奪われ、魅了されていた。
火神さんが起こした歓声ごと呑み込み、全て涼太の応援に変えてしまうようなインパクト。
得点は一進一退。
よく、漫画などでありがちな、同点の展開や残り数秒での逆転……。
漫画だから、アニメだからと思われがちだけど、実際の試合の方が、もっともっと有り得ないような展開が起こり、ずっとドラマチックなんだ。