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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔





ウィンターカップ、決勝戦。



小雨がちらつく冬空の中、ファイナルのその名にふさわしく、年末だというのに会場は超満員。

応援席スタンドには、一般客から他校のメンバーまで、老若男女様々なバスケファンで埋め尽くされ、試合の行く末を見守ろうとしていた。

そんな中、遠目でも分かる、キセキの世代の面々。

それぞれ、チームメイトと共に観戦に来ているようだ。

テレビカメラや新聞社、雑誌社なども多数カメラを構えている。




コートでは、厳かな雰囲気の中、試合前のウォーミングアップが行われていた。

お互い、相手を頭の隅で意識しつつ、言葉を交わすことはなかった。

外気温の低さなどものともせず、体育館の中は熱気に満ちている。

今日の海常の選手たちの状態は、最高の一言に尽きる。

チームはこれ以上にないほどの仕上がり。
それに加えて、ベンチに入っているメンバーを含め、全員が集中出来ている。

「みわ」

「うん」

シュート練習を終えてベンチに戻って来た涼太の足元に跪き、テーピングを巻き直す。

これは、故障している部分を覆うものではなく、怪我防止の為に巻いているもの。

彼の動きをサポートするためのものだ。

「痛むところ、ない?」

「うん、バッチリ」

「……行ってらっしゃい」

テープを止めると、涼太の両手が私の両肩に添えられた。

「涼太、どうし……」

顔を上げると、涼太の顔が間近にあって……

何か柔らかいものが一瞬、唇に触れた。


へ。


それが彼からのキスだと気が付いたのは、観客席から割れんばかりの女性の悲鳴が聞こえたからだった。



「行ってきます!」

サラサラの黄色の髪を靡かせて、笑顔でコートへ戻っていく涼太の背を見送った。





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