第71章 笑顔
「ぅ……んっ」
深く重なった唇の間から差し込まれた舌が、更に貪欲になって蠢く。
隙間なく抱き寄せられた身体が、熱い……。
涼太の気持ちが、伝わってくるようで……。
目を瞑って、受け止めていた。
ゆっくりと口内を探るように、味わうように。
生温かい舌が、熱を交わし合う。
繋がりが離れると、吐息は熱く濡れ、2人の間を唇の代わりに銀糸が繋いだ。
涼太に、何を言ってあげればいいか、分からない。
うわべだけ取り繕うような言葉は、かけたくない。
「涼太」
だから……
今こころにある、正直な気持ちだけ……。
「明日は……笑おうね」
もう、悔し涙を流す彼を見たくない。
あれだけ辛い思いを繰り返してきたんだ。
最後に勝って、皆で笑おう。
「うん……ありがと、みわ。
すげー……元気出た」
そう言った涼太の表情は、どことなくホッとしたものに見えた。
明日の対戦相手、誠凛。
キーマンは当然、光と影……
火神さんと黒子くんだ。
海常には、涼太という強い光があっても、影がいない。
でも、その代わりに信頼出来る、背中を預ける事が出来るチームメイトたちがいる。
そして……私が……彼の影になりたい。
彼がコートに入ってしまったら、なんの力にもなれないけど。
何の役にも立たないけれど……。
やり場のないこの気持ちを込めて、涼太の手をぎゅっと握りしめた。
それを優しく受け止めるように握り返されたのが嬉しかった。