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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


「何の用かと改まって言われると、少し困るんですが」

なんだか煮え切らない黒子っち。

かつて、IHの試合の合間で交わした会話や、みわについて話をした時の記憶が頭をよぎる。

何を伝えたくて、オレをわざわざこうして呼び出したのか?



「特に、深い意味があった訳ではないです。
ただ……この、決勝戦前の高ぶった気持ちをどうにかしたくて」

少し照れ臭いような、はにかんだような微笑みを湛えた彼のその発言……

……へ?

「黒子っちがそういうの、珍しいっスね」


「黄瀬君も、そんな気持ちじゃないですか?」

「……確かに、そうっスけど」

腹の底の方からぐつぐつと滾った何かがせり上げてくる。

アドレナリンが放出されて、脳みその深くまで興奮していくこの感じ。

試合を勝ち上がっていくたびに、あの静寂に包まれたコートに足を踏み入れた時に刻み込まれる感覚だ。

普段とは違い、ファイナル前日にはこうしてコートに入る前から同じような状態になっている事がある。

この状態になった時は……翌日は自分の身体が、普段よりも更に、自分のものになる。

何を言っているんだと言われそうだが、これがボキャブラリーの少ないオレが表現出来る限界か……。

黒子っちも、似たようなモノを感じているのだろう。

でも、黒子っちは、意味のない事はしない。
彼の行動にはいつも深い意味がある。

思慮深い彼は、そういう人だ。
そう思っていた節があるのは確か。

この高ぶりをどうにかしたくて……なんて、彼らしくないなと素直に思ってしまう。

「なんか、黒子っちらしくねぇっていうか……」

「そうですか?
ボクだって、感情的に行動することくらい、普通にあることなんですが……」



……それはなんだか現実味の無い言葉で。

試合中も、そうでない時も冷静な黒子っち。
感情的になって行動するなんて、それこそオレみたいじゃないスか。


……

いや、違うか……。

福田総合戦の時にオレにかけてくれた言葉。

2年前のウィンターカップ、準決勝。

黒子テツヤは、誰よりも熱い男だ。




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