第17章 噂 ー後編ー
「お、おまっ……! まだ高校生なのに、神崎とそんなことしてんのかよ!」
「あーもー、まだしてねっスよ!」
「……え? 黄瀬、本気で言っているのか?」
「なんなんスかこれ、もー! してないし、まだするつもりもないんスよ! だから別に、同じ部屋になるならそれはそれで構わないっスけど」
「き、黄瀬……お前、健康な男子にあるまじき事態だぞそれは……!」
「そりゃ、生殺しっスけど……って、一体森山センパイは何を求めてるんスか!」
「とりあえず、俺から神崎へ、一旦聞いておく。……もしそうなったら黄瀬、頼むぞ」
「了解っス!」
肉体的な距離を置くと決めたんだ。
……キスくらいはいいっスよね……?
それに、みわっちを危ない奴から守るためなら、我慢できる。
我慢…………する。
一瞬浴室でのみわっちが頭に浮かんだが、慌てて振り払った。
でもあの不器用なセンパイが、みわっちになんて聞くんだろ……?
「いえ、私、1人部屋で大丈夫ですよ」
案の定翌日、不思議そうなみわっちの声が届いた。
「いや、1人じゃあ危ねえこともあるんじゃないかと思ってだな」
ってセンパイは言ってたけど、そりゃあ『山ほどいる部員の中じゃ、何するか分からんやつもいる』とは言えないっスよね……。
「お優しいんですね、ありがとうございます。でも、わざわざ黄瀬くんと2人の部屋になる方が、他の部員の方々にも良くない気がします。
先輩方のお部屋とも近いので、何かありましたら相談させていただきます!」
「そ、そうか。分かった。何かあったらすぐ言えよ」
……そう言われてしまっては、笠松センパイもそれ以上どうしようもなかった。
みわっちの言うことはもっともなんだけど、心配っスね……。
第一、みわっちに告白したセンパイって一体誰なんスか。
森山センパイに聞いても教えてくんないし……。
大体、バスケ部員ならオレと付き合ってる事、モチロン当たり前に知ってるっスよね!?
……当たり前……知ってるはずなのに……なんか……変じゃないスか?
いや……変じゃないのかもしんないけど……。
なんだろう。何か引っかかる。
何か他の目的がありそうな……。