第17章 噂 ー後編ー
「だ、大丈夫! もうさっき見たから! ちょっと赤くなっただけ」
目と鼻を真っ赤にしたみわっち。
明らかにウソだと分かっているのに、みわっちは本当の事を話してくれない。
いつもそうだ。
オレにはいつも、話してくれない。
信用されてないのか。
「おい、笠松ー黄瀬ーちょっとー」
「ほら黄瀬くん、森山先輩が呼んでるよ!」
「……もー……ハイ! 今行くっス! みわっち、ちょっと待っててー!」
森山センパイ、いいとこでなんなんスか〜!
「笠松、合宿での神崎の部屋なんだが……ちょっと配慮した方が良くないか?」
え?
みわっち抜きでみわっちの話?
「ん? だから神崎は1人部屋にしてるはずだぞ?」
「いやだから、1人ってのがかえって危なくないかと思ってさ……」
「どういう事だよ」
「……森山センパイ、何か知ってるんスか?」
「いや、さっき神崎が3年から告白されてるのを見てさ……ほら、合宿とか行くと環境変わって、思い切っちゃうヤツとかいるじゃないか」
「こ、告白っスか!?」
みわっち、モテるんだ……。
確かにあんなに何でも出来て、キラキラ頑張ってたら誰でも惹かれるよな……。
「なるほど、強引に何かをしようとしてる奴がいるかもしれねえってことだな。
うーん、違う棟の部屋借りようったって、そんなに広い宿じゃねえしなあ」
「他に女子がいればいいんだが…….」
3年マネの先輩は、家庭の事情で参加できないらしい。
「黄瀬オマエ、神崎と同じ部屋じゃまずいか?」
「ちょ、笠松、それはさすがに……」
「ん? なんでだ? 付き合ってるんだからいいかと思ったんだが」
「いやいやだからさ、盛り上がって次の日黄瀬の腰が使い物にならないとか、シャレにならないだろ?」
「腰……? どういうことだ?」
「笠松……」
森山センパイが思わず頭を抱える。
笠松センパイはホントーに疎いっスね……。
前進しない2人の会話。
「あーもー笠松センパイはー! 森山センパイはオレとみわっちが夜ヤリまくって、練習に支障が出ないかって言いたいんスよ」
「なっ……、ヤリ……!?!」
「笠松……俺はお前のそういうピュアなとこ、好きだぞ」