第71章 笑顔
我がクラスの決勝戦での作戦は
"打たせて取る"
というものだった。
つまりそれは、相手を誘導して、攻めてくるコースを制限するという高度な作戦。
……準決勝までひたすらベンチを温め続けた私に、白羽の矢が立ってしまった。
「みわが出れば、スパイクはみわに集まる」
バレー部3人の絶大な信頼により、まさかの決勝戦で初出場となった私。
……スパイクやサーブをはじめとした、ありとあらゆるボールが私に集まります。
向こうのチームの作戦は"守備の穴を突け"らしいので(聞こえた)、当然と言えば当然で。
作戦通り……とチームメイトたちはほくそ笑んでいるけれど、いくらバレー部とはいえ、私に集まったボールを、全部が全部取れるわけではもちろんない。
ブロックの穴を突いてきたボールや、レシーブなど、私だってプレイヤーとして参加している以上、精一杯ボールに向かって頑張らないと。
どれだけ教わっても、腕に当たったボールはあさっての方向に飛んでいく。
そんな中、ボールが破裂するのではないかと思わせるほどの音を立てて、バレー部エースが打ったスパイクがこちらに向かってきた。
怖いと思う暇もなく私の腕に当たったボールは、勢いを殺すことなく私のアゴを直撃した。
「神崎!」
「みわちゃん!!」
痛みもなく突然揺れる視界に、周りの悲鳴。
辛うじて気絶するような事にはならなかったけど、大事を取って私はベンチに下がった。
何故かそれをきっかけにチームメイトが奮起し、我がクラスは優勝を勝ち取った訳なんだけど……。
結局試合では何にも活躍出来ず、微妙な気持ちだけが残ってしまった。
そして、こうして涼太にも笑われ……自分の情けない運動神経にうなだれた。
「あ〜……可愛かった……でももう、卒業まで大きな学校行事もないっスね」
……卒業。
そっか……
なんだか、あっという間だったな……。
不思議……。
こうして並んで歩いているのが当たり前じゃなくなるなんて……。
来年の今頃は、何をしているんだろう。