第71章 笑顔
無意識下で、あんな事を考えてしまっていたなんて。
自分の嫌なところがまた浮き彫りになった海常祭から数日後。
今日は全校での球技大会。
卒業までの間、全学年が一緒になる行事はこれが最後となる。
卒業アルバム委員と写真部は、いい写真を撮るために朝から気合いが入っていた。
これが終われば、3年生はひたすら受験モード。
私たちはウィンターカップに向けて一直線だ。
球技大会は、学年の括りはなく、それぞれクラス毎に出場する競技を自由に決める形式。
我がクラス3-7は、男子がサッカー、女子がバレーボールに出場する。
球技大会自体は1日がかりで行われるけれども、自分の出番は午後の僅かな時間だけ。
午前中は、男子のサッカーの応援をしに、グラウンドの応援スタンドに来ていた。
涼太はフォワードで、バンバン点を取っている。
その得点力はサッカー部顔負け。
流石すぎる……。
ゴールを決めるごとに、ギャラリーそっちのけでこちらに手を振ってくれるのが、なんだか少し申し訳なくて。
ぎこちない笑顔で手を振り返した。
「そんなんさー、当たり前だって」
私の左隣に座り、紙パックのコーヒー牛乳を持ったあきが、呆れたように言った。
「……わたしも、そんなに悩む事じゃないと思うけど……」
私の右隣でヨーグルトドリンクを飲んでいるのは、同じバスケ部マネージャーのキオちゃん。
あきとキオちゃんは、進路相談の時に同じグループだったらしく、いつの間にか仲良くなっていた。
最近は、この3人でいる事が多い。
つい、先日の独占欲の事について相談してしまっていた。
「黄瀬だって、あんたがそう思ってるって知ったら、かえって喜ぶくらいじゃないの?」
「わたしもそう思うよ、みわちゃん」
正反対の2人なのに、気はとても合うらしい。
私は、2人が仲良くなってくれて、凄く嬉しいんだけど……。
「だって、彼女にさ、告白してくる子の事まで把握されてたら怖くない?」
「別に?」
「うっ……」
「とにかく考えすぎだって! じゃあさ、こう考えてみたら?
あんたが誰かから告白されてるのをさ、黄瀬がコッソリ聞いてたらどう思う?」
「どうって……どうも思わないけど……」
あきとキオちゃんは、顔を見合わせて大きくため息をついた。