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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


夕陽を浴びた涼太の髪はオレンジ色にきらめき、宝石みたいな輝きを放っていた。

「……ごめんね、オレ、大切な人がいる。
だから、キミの気持ちに応えてあげる事は出来ないんス」

優しく、でも……静かな声、だった。

「そ、そう……ですか。
そう……ですよね、黄瀬先輩、モテるし」

ここから聞いていても明らかに震えるその声に、今度は胸が違う悲鳴を上げた。

私が涼太と付き合っていなかったら、彼女にもチャンスはあっただろうか。

私が、この子の幸せを先に奪ってしまったのか。

あきに聞かれたら怒鳴られそうな事を、つい考えてしまう。


「先輩……お願いがあります」

え?

彼女は制服のリボンをしゅるりと解いて、涼太に抱きついた。

「思い出を……いただけませんか」

涼太も返答に困ったのか、静寂が辺りを包む。

女の子から、告白を断られた相手にそう伝えるのは、どれだけ勇気がいる事だろう。

こんな場面を覗くようにしている自分が、これ以上ないほどに醜く、恥ずかしい。

かといって今ここを離れることは出来ない。
私は目を瞑って蹲り、耳を塞いだ。

自分の手の血管の音だけが耳を支配する。

何も見えない。
何も聞こえない。

なんて馬鹿な事をしたんだろう。
恥ずかしい。

恋心という美しい感情を、第三者が覗き見ようだなんて。

早く断って欲しいだなんて。
その恋心を踏み躙るような事を一瞬でも考えた、欲にまみれた自分。

涼太の隣にいる女性として、失格だ。
こころから反省していた。





どれだけそこでそうしていたか、分からない。

思い出したように顔を上げると、あたりはもう薄暗くなっていた。

当然、前方で話していた2人は既にいない。

涼太に何も返事を返していない事に気付き、ポケットのスマートフォンに触れる。

新着メッセージは、なかった。

もしかして、あのまま2人でどこかに行ったのだろうか。

それとも、私を探して心配している?

どちらにしろ、すぐに戻らなきゃ!

焦って立ち上がり、踵を返して走り出そうとした途端、何かに蹴躓いて視界が揺らいだ。



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