第71章 笑顔
"ごめん、今ちょっと
オレに話があるってコが来てて。
少しの間、行ってくるから
昇降口で待っててくれる?
それか、終わったら部室まで
迎えに行くっスよ!(*^o^*)"
あの3人組が去ってから間も無く、私のスマートフォンが振動し、涼太から届いたメッセージ。
私は既に、昇降口まで来ていた。
思わず隠れた靴箱の向こう側には、先ほどの彼女と涼太がいる。
「ごめんね、今メッセージ送ったから、もうオッケー。お待たせ」
「あっ、ま、待ち合わせ、とかですか!?
時間、大丈夫なのでしょうか!?」
「ん、ちゃんと説明したからダイジョーブ。
で、オレに用ってなんスか?」
涼太の声が優しい。
よそ行きではあるけど、耳を甘く擽る声。
相手の緊張感を解こうとする、彼の心遣いだ。
「あ、あの、あの、ちょっとこちらまで来て頂けますか」
女の子は涼太を誘導していく。
こっそり、私もついて行ってしまった。
着いたのは、総合体育館の裏。
3人組のうちの残り2人と鉢合わせにならないよう、茂みに隠れた。
……何、やってんだろ。
「あ、あの、黄瀬、先輩!」
「ハイ」
ここまでくれば、涼太だって分かってる。
いや、彼の事だから、最初に声を掛けられた時から勘付いているだろう。
「わたし、ずっと黄瀬先輩の事が、好きでした」
「そうなんスね、ありがとう」
早く断ってと、私の中の黒く醜いこころが囁く。
「どこにいても、先輩が気になって、気になって。
バスケの試合も、全部観に行ってます!」
「マジっスか? いつも応援アリガト」
「先輩は、最高です」
「改まって言われると、なんか照れるっスね」
「黄瀬先輩……わたしと、付き合って下さい」
どくん。
彼女がそう言うのは分かっていた筈なのに、その言葉で胸がザワザワとざわつく。
断って。
断って。
スッパリ諦められるように。
そんな風に懇願している自分がいた。
最低、だ。