• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


部室棟を出ると、部室棟と校舎を繋ぐ廊下に、女子生徒が3人ほどたむろしている。

特に気にも留めず、横を通り過ぎた。

「あ、あの……っ!」

……私、だろうか?

いや、勘違いかもしれない。
特に振り向きもせず、意識だけ彼女らに向けた。

「待って下さい!」

その内の1人に突然肩を掴まれ、驚いて振り向く。

どうやら、私に用があるみたい……?

「はい……なんでしょうか」

3人組の真ん中の子が、モジモジしながら上目遣いでこちらを見ている。

うっすらと化粧を施してある頬は、化粧品の効果ではない薄い赤に染まっているように見える。

「あの、バスケ部の黄瀬先輩は、まだいらっしゃいますか?」

涼太に用?

「あ、今日バスケ部は練習休みですよ」

「ええッ!?」

少し赤らんでいるように見えた顔が、一瞬で青ざめた。

何か、急ぎの用かな?
これから私は一緒に帰るところだけど……。

とりあえず聞いてみようか。

「今、昇降口で……」

私の言葉を遮って、彼女たちは話し出した。

「ほらー! どうすんのよ!
だから学祭の時間中に声かけとけって言ったじゃん!」

3人組の内の1人が、真ん中の子の背中をバシンと叩く。

「だっ、だって……目の前にすると、なんて話しかけたらいいのか……」

「そんな事言っててどうすんのよ!
先輩、卒業しちゃうんだよ!?
残り少ない学生生活を恋人として過ごす、最後のチャンスなんだよ!?」

……あ……。
そういう、事か……。

ドクンと、心臓が嫌な音を立てた。

私の存在など始めからなかったかのように、3人は話し続けている。

「どうしよう」

「もー、明日声かけるしかないじゃん!
早くしないと、取られちゃうよ?」

「うん……そうだよね……」

涼太に恋する女の子。

涼太が私と付き合ってること、知らないんだ。

今ここで、言っちゃえ。
そうしたら、この子だって諦める。
彼女がいるなら仕方ないって、諦める筈。

もう3年近く付き合ってる人がいるんだよって。
2人の間に入り込むのは、無理じゃないかなって。

……。

「……今、黄瀬くんなら昇降口に居ますよ」

私がそう告げると、3人の目が輝いた。

「本当ですか!? ありがとうございます!」

騒ぎながら、走り去る3人。


その背を見送り、重くて黒々としたため息をひとつ、吐いた。


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp