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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


結局、校内を回る時間はあまりなくて、涼太と遅いお昼ご飯を食べて、少し回っただけで終わってしまった。

ちょっと残念だけど、ふたりきりで居られる時間が沢山あったから、私は満足。

今日は練習もない。
体育館はイベント会場になっているため、使用出来ないんだ。

私は今、誰もいない女子更衣室に荷物を取りに来ている。

この時期に洗濯物を忘れて帰るなんて、なんてドジ。

昇降口で涼太を待たせてる。
急がなくちゃ。

ロッカー内からTシャツを出し、乱暴に鞄に突っ込み、踵を返した。

ドアを開けようとしたら、外の廊下を歩く男子生徒の声。

「今日の黄瀬先輩のオバケ、超ビビったよな!」

……涼太の、話?

どうやらうちの部の1年生みたい。
聞き覚えのある声たちだ。
ゾロゾロと複数の足音がする。

いけないと思いつつも、ついつい聞き耳を立ててしまう私。

「でもさー……」

「ん?」

「黄瀬先輩って、凄いよな」

「今更かよ。あの"キセキの世代"だぞ?」

「いや、それはそうなんだけどさ、バスケも超上手くて、顔も超イケメンでさ……俺があのスペックだったら、調子乗ってんだろうなって思って」

「確かに、なんでも上手くいきすぎて、真面目にやんのバカらしくなるかもな」

……実際、涼太もそういう時期があったけど。

「だろ? でも先輩はさ、誰よりも早く来て練習してるし、勉強も頑張ってるし、俺たちみたいな後輩にも、さっきみたいに気さくに接してくれるし……スゲェなって思った」

「……だから、スゲェんだよ、あの人」
「スゲェよなあ……」
「あんな風になれたら……」
「なりたいよなあ……」

「……勝ちたいよな、あの人と」

「うん、勝ちたい」

「今からさ、駅の向こう側にある森林公園のストバスコートで、練習しねえ?」

「……すっか」
「俺も行くわ」
「俺も」

駆け足で去っていく足音たち。




涼太も、すっかり"先輩"だ。
あんなに素敵な先輩がいたら、憧れちゃうよね。

……私も、がんばろう。
皆が居なくなったのを見計らって、廊下に出た。








「おまけに黄瀬先輩、神崎先輩と付き合ってんだよな」

「マジで!? 神崎先輩、いいよな……」

「まぁ、相手が黄瀬先輩じゃ……」

「……どう転んでも勝てねーな……」




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