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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


「は〜っ、暑かった!」

オレたちは重くて暑い着ぐるみを脱いで、凝り固まった身体を大きく伸ばした。

「肩こったね」

先に外に出たみわは、脇を締めたまま、肩を回している。

肩こりによく効くらしい。

「みわ、揉んであげよっか?」

「な、なんか手つきがヤラシイからいい」

……ちっ、思ったよりも早く下心に気付かれた。

交代の時間なので、今は客も入っていない。
2人で教室を出ると、女子生徒が1人で受付役をやっていた。

「あ、2人ともお疲れ様!
悪いけど次は受付だから」

……そう。

あいつらは、オバケ役の1時間だけでなく、受付役をやる1時間も合わせてバックレたのである。

これは、焼きそばパンだけではとても割に合わない。
コロッケパンも奢らせなくては。

「あれ黄瀬くん、ネクタイは?」

みわの指摘を受けて首元に触れるが、襟元は大きく開いてあり、ネクタイは着けていなかった。

そういえばさっき暑いからと、着ぐるみの中でネクタイを取ったんだ。

「落として来たかも。ちょっと見に行ってくるっス」

「あ、私も行くよ」

「2人とも、あと5分で交代だからねー!」

教室のドアをくぐるところで
同級生の声が背中から追ってきた。

「すぐ戻るっス!」



薄暗い教室内に、ぼんやりと浮かび上がるゾンビオバケ。

その異様な姿の前に、クラスメイトが2人、腕を組みながらお喋りをしている。

その片割れがオレに気付き、片手を上げた。
その手には、学校指定の焦げ茶のネクタイ。

「あ、黄瀬。ネクタイ落ちてたけど、これお前の?」

「そうっス! サンキュー!」

次に着ぐるみに入る役割の男子が、落ちていたネクタイを見つけてくれていたらしい。

「良かったね、すぐ見つかって」

みわと廊下に戻ろうとすると、聞き慣れた声が受付から聞こえてきた。

「ここだよな? 黄瀬先輩と神崎先輩のクラス」

「オバケ屋敷って言ってたし、間違いない筈だけど」

こっそり廊下を覗くと、笠松クンと小堀クンをはじめとした、バスケ部1年生がゾロゾロと受付に集まっていた。

1人ずつ来場者ノートにクラスと名前を書いて、教室に入っていく。

これは、オレの腕の見せ所っスね?



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