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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第71章 笑顔


「じゃあ、黄瀬君、神崎さん、宜しくね!」


残暑厳しい中の開催となった、
海常祭当日。


オレたちに手渡された……オバケの着ぐるみ。


「やられた……」


オバケ役のバレー部2人がバックレた。
さっきトイレで見掛けたと思ったのに……。

「……みわと校内回る予定が……」

既に他のクラスメイトは皆、自由に校内を回っているだろう。

他にやる人間がいないのだから仕方ない。
後で焼きそばパン、奢って貰うっスよ……。

「わ、これ凄くしっかりしてるんだね」

みわは着ぐるみをまじまじと見て、なんだか嬉しそうだ。

オレたちに渡されたのは、2人一緒で入る……デカい着ぐるみ。

顔がとにかくリアルで気持ち悪い。
幽霊とかオバケっていうよりも、まるで某ゾンビアクションゲームに出てくるゾンビだ。

「子ども……泣くよね? これ」

みわが飛び出した目玉をツンツンしながらそう言った。

「確かに……あの暗い中でこれ出てきたらトラウマっスわ」

もっと、オバケ提灯がペロッと出るとか、そういう可愛らしいのはないのか。

「ちょっと、入ってみる?」

みわは、子どもを脅かす存在になる事に微かな罪悪感を感じつつも、着ぐるみへのワクワクが抑えられないらしい。

可愛すぎる。

緞帳の様な厚めの布をくぐって中に入ると、思ったよりも中は窮屈ではなさそうだ。

服飾科への進学を希望している子が作っただけあって、質がいい。

しかし……
2メートル近いバレー部の2人用に作ってあるから、とにかくデカい。縦に長い。

「みわ、これ引きずるっスよね?」

20㎝ちょいの身長差のせいで、きっと外から見たら顔の部分が半分ぐちゃりと崩れて、余計に気持ち悪いオバケになっているであろう。

「踏み台とか置こうか? 動き回れなくなっちゃうけど……」

こうして、まったく動き回りはしないけど、とにかくデカくて気持ち悪いオバケが出来上がった。




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