第71章 笑顔
……正直、迷ったこともあった。
このタイミングで、海外に挑戦するべきなんじゃないかって。
……でも、やっぱり……
笠松センパイや小堀センパイと、もう一度……戦いたいんだ。
そう素直に思えたから、今はそれでいいんだと思う。
……進学したらみわとは、かなり距離が出来てしまう。
オレは神奈川の学校で、みわは東京だから、一見隣の県だし近いじゃないか……とも思うが、オレの学校もみわの学校も、キャンパスがあるのは都市部から離れた田舎だ。
お互いに逢いに行くのにどの程度時間がかかるか、考えたくもない。
ヘタしたら、新幹線で大阪に行く方が近いかもしれない。
これは……プチ遠距離恋愛を覚悟っスかね。
でも、みわは少し安心したような表情だった。
やはり、オレが海外に行くと言い出すと思っていたんだろうか。
きっと1人で不安で悩んでいたんだろうなと思うと、申し訳ない気持ちになった。
「みわ、学祭、当日は一緒に回ろう。
球技大会、出番じゃない時は一緒に居よう」
3年でまた同じクラスになれて、毎日教室でもみわの姿が見れて嬉しいけど、3年はもう卒業も間近で、大きなイベントもない。
これからの毎日を、全部全部大切にして、みわと過ごすんだ。
こうやって一緒の学校に通えるのは、これが最後だから……。
「……うん!」
みわは、ふにゃりと笑った。
「うちのクラスの出し物、オバケ屋敷だから当日ヒマでいいっスよね」
「そうだね。でも、涼太はオバケ役やらなくていいの?」
「うん、バレー部のヤツに任せた」
「背が高いから、突然出て来たらビックリするよね」
「みわ、球技大会は何に出るんスか?」
「私? バレーボールだよ」
「……気を、つけてね」
「ええッ、その目、なんか酷い!
確かに私はちょっと運動が苦手だけど……」
「ちょっと、ね……」
他愛のない話をして、笑う。
こんな時間を過ごせるのも、なかなかなくなってしまうんだろう。
全部、大事な思い出だ。
大切にしたい。