第70章 特別
唇が、重なっては離れて。
離れたと思ったらすぐまた、熱を求めて。
暫くそうして、お互いの想いを交換しあっていた。
「涼太……ありがとう」
「ん……?」
私が話し始めたから、涼太の唇は鼻筋へと向かっていく。
「花火……こんな大きいの、初めて見たよ。
テレビでは見た事があるけど……」
「うん」
「こうやって……経験したことがないこと、全部涼太に教えてもらってる…… 」
「大袈裟っスよ、みわ」
涼太はクスクスと笑っている。
ううん、大袈裟なんかじゃない。
「それに、こんな特別な場所で……」
「特別な場所?」
ここは、海常高校、バスケットボール専用体育館の屋上。
そう、ここは……
「初めて出来た、私の居場所……だから」
ずっと、無かった。
家にも、学校にも、どこにも無かった。
家族の中にも、友達の中にも、
どこにも、なかったんだ。
自分の、居場所が。
でも、あなたに出逢って、バスケットボールに出逢って。
こうして今は、私の居場所が……ある。
それがこんなにも、嬉しい。
「……オレの隣」
「え……?」
「オレの隣も、みわの居場所っスよ」
「…………」
「あ、なにその驚いたような顔。嫌なんスか?」
「う、ううん、そうじゃなくて……」
涼太の、隣に?
「そんな事……言って貰えるなんて、思っていなかったから……」
「……泣かないで、みわ」
「涼太……」
強く、強く抱き締めてくれる。
大好きな、腕の中。
私の全部、涼太のものにして……。
「……みわ、お祖母さんが買ってくれた立派な浴衣、汚したくない。
……オレの部屋に、来ない?」