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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


ドン……。


ドドン……。


その音が響くたびに、内臓が揺らされるような振動が下腹部から伝わってくる。

大音量の太鼓を聞いているみたい。

目の前に広がる光景は、なんて幻想的でロマンチックなんだろう。

大小、色とりどりの花たちが次々と咲いては散っていく。

その色が、真っ黒の海に映って、消えて。

これが……

「すごい……花火だあ……」

「……目の前を遮るものがないし、
ここなら見やすいかなって、思いついて。
思いっきり、職権濫用っスけどね」

そう言って笑う涼太の髪に、顔に、花の色が映って、まるで彼が七色に光ってるみたいだ。

……綺麗……。

「……ん? みわ? 見ないの? 花火」

口もとに笑みを湛えたその表情は、いつもの彼。

「見るよ、見る」

また、つい見とれてしまった。
邪な気持ちを振り払うように、小走りで端のフェンスに掴まる。

海沿いの道に、人がひしめき合っているのが見えた。

それすらも、景色のひとつに見えて不思議。
そこにいる人たちは、大変だろうけど……。

次にドドンと上がった花火は、どうやらキャラクターを模したもののようで、そういった類のものに詳しくない私でも、どこか見覚えのあるものだった。

「あ!」

手に持っている、笠松先輩に買って貰ったわたあめの袋を見る。

ふっくらした顔にまんまるほっぺた。
ネズミのような体躯が愛らしい、このキャラだ。

「あ、今の花火、ソイツっスね」

「うん、先輩とね、涼太に似てるって話してたんだ」

「ええ、オレ? 黄色いから?」

「分からないけど、なんとなく似てない?」

「そーっスかね……」

「ふふ、可愛い」

愛嬌のあるその顔をつるりと撫でた。

「……みわ、オレだけ見てよ」

「……ん?」

「オレ以外に触らせないでよ」

え?

涼太との距離が突然縮まって、右の耳朶に鈍痛が走った。

目の中でパチッと火花が散ったような、衝撃。


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