• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


突然髪を弄っていた指が、右耳の耳朶に触れた。

「ひゃ!?」

あまりの突然の感覚に、ビクリと肩を震わせて反応してしまう。

耳朶を捏ねるように、ふにふに、ふにふにと……。

……涼太は相変わらず無言だ。

怒っている理由がここにあるんじゃないかと思って、黙って様子を伺うことにした。


……。


…………。


………………?


耳に入ってくるのは昼間よりも大人しくなった蝉の声と、早くも秋を告げたがっている鈴虫の声。

ひたすらふにふにと耳朶を弄る涼太。

彼は一言も声を発さず、なんだかシュールな画が出来上がってしまっている。

……様子を伺おうと思ったけれど……ついこの異様な状況に耐えられずに口を挟んでしまう。

「あの……なんか、ついてる?」

「……」

「涼太……?」

「……たこ焼き、食べよう」

「え?」

たこ?

「あ、ああ、たこ焼きね。うん、食べよっか」

なんだ、お腹が空いていただけだったのか……。

ああ、ドキドキした。
普段よく喋る涼太が無言ってだけでも、物凄いプレッシャーがあるのに……。




少し冷めてしまったたこ焼きを2人で頬張る。
外で食べるっていうだけで、なぜだかワクワクして、美味しく感じちゃう。

浴衣を着てお祭りなんて……
まさか、自分が体験できるなんて。

いつも、街行く人たちを見て羨ましかった。
楽しそうにオシャレをして、仲良さそうに手を繋いで……。

でも、他の人を羨ましがる自分があまりに醜くて、嫌いで、目を逸らしてた。

「みわ、花火……見えるトコに移動しようと思うんスけど」

「あ、うん」

涼太は、再び私の手を引くと、夜店でいくつか食べる物を買って、歩き出した。



どこまで行くんだろう?
海沿いは凄い人になってると思うけど……。

目立った会話はない。

人々の喧騒を背に、カランコロンと下駄を鳴らして向かっている方向は……。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp