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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


「笠松先輩、そろそろ……戻らないと皆さん、心配しませんか?」

「オウ、これ食ったら戻るか」

先輩はお腹が空いたと言ってたこ焼きを購入し、私にも石段の隅に座るように促した。

私も1パック買って貰ってしまった……。

後で、涼太と食べようと思い、手はつけてないけど。

「上手くいってんの、オマエら」

先輩は私に気を遣って、わざわざここに居てくれてるんだ。

率直なその質問に、今の私はうまく答えられない。

「はい……すみませんお気を遣わせてしまって」

目立った喧嘩をしているわけじゃない。
トラブルがあるわけじゃない。
はたから見れば、順調な2人だろう。

上手くいっていないのは、上手く折り合いをつけられないのは、私のこころの中だけだ。

いつまでこんな醜い気持ちを抱き続けてるんだろう。

大人になって、涼太がもし、新しい世界へ羽ばたいていったら、こんなもんじゃない。

得体の知れない不安と恐怖が、彼を好きだと、愛しいと思う気持ちの後ろにピッタリとくっついて存在している。

それが、こういう時にクルリとひっくり返って、表立って出てきてしまうんだ。

どうしたら、綺麗な気持ちで涼太の事を好きでいられるんだろう。


ついまた考え込んでしまうと、前髪にカサリと何かがぶつかった感触。

「きゃ、なに……?」

「ん? あ、デッカい虫」

先輩のその発言に、血の気が引いた。

先輩に買ってもらったわたあめとたこ焼きで、両手は塞がっている。

「きゃ、やだ、せ、先輩、お願いします、取って下さいっ!」

感覚からして、結構大きい虫だ。
虫、虫だけはどうしても苦手で……

「ちょい待てよ……」

たこ焼きのパックを片手に持ったまま、笠松先輩が私の髪についた虫を取ろうとしてくれる。

「とれ、とれましたか?」

先輩の指が前髪に触れたと思ったら、ジジ……と不快な羽音が耳に入り、ゾゾッと背筋に嫌なものが走った。

「あ、こら、逃げんな」

髪の上をサワサワと何かが動いている感覚がなかなか離れない。

「先輩、お願いしますうう、ああああああ」

「お、おっ、いや、潰さないようにしようとすると……」

「潰すとか怖い事言わないで下さいっ!!」


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