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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


「おばあちゃん、小物類まで全部揃えるなんて……」

結局、上から下までバッチリお祭りルックに仕上がった。

「メチャメチャ可愛いっスよ。ほら」

「うん……」

涼太の方がカッコよくて、直視出来ないのに……。

顔を上げられないまま、彼が伸ばした左手をそっと握った。

気付けば、いつも私は涼太の左側を歩いている。

隣に人がいる風景に慣れてきている自分に、驚いた。


「規模は小さいけど、花火も上がるみたいっスね」

「え、本当!?」

2年前に2人で花火はしたけど、大きな花火って、見た記憶がない。

きっと、素敵だろうな……。

「嬉しい。楽しみ」

無意識に、絡んだ手に力が入った。

「……オレ今日、ちょう抑えてるから……
あんま可愛いカオしてると、食べちゃうっスよ」

「は、え?」

「……なんでもないっス」

涼太がなんて言ったかはよく聞き取れなかったけど、彼の耳が赤く染まって見えたのは、夕焼けのせい?





陽も沈みかけて、肌に纏わりつくような暑さも僅かながら和らいできた。

海常高校近くにある神社。

境内までの階段が長く、1段ごとに夜店が出ているので、まるで商店街のような盛り上がりだ。

目の前には驚くほどの人の波と、遠くから聞こえる祭り囃子。

ここにいるだけで、ウキウキしてしまう。

「何しよっか、みわ」

「え、えっと……」

「なんか食べたい?
たまにはワガママ言って?」

「え、え……」

そう言われても。
こんなお祭り、来た事ないし……

食べ物の屋台。
射的、金魚すくい。

見渡すだけでも数え切れない種類のお店があって、もう何がしたいかなんて思いつきもしない。

「あ、あう、あう」

「……ちょっとグルっと周ろうか」

私は笑いを堪えている涼太に優しく手を引かれ、人の波に飲まれていった。


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