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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


そこから暫く、涼太のアメリカでの話を聞いていた。

こんな練習をしたとか、こんな人とプレーした、とか……。

宿も、参加者全員が同じ建物内に居たらしく、深夜まで盛り上がっていたみたい。

流石の涼太は、たった1週間の滞在でも友人と呼べる人たちを作ってきたそうで、練習時間以外の交流も満喫したようだった。

「ま、言葉は分かんなくっても、なんとかなるモンっスね」

という彼らしい一言で片付けていたけれど、そこに居たのが私なら、とても同じようにはいかなかっただろうな。

国境も人種も全てを超越して人々を魅了する人間なんだ、黄瀬涼太というひとは。

世界に通用する、ひと。






「みわ、そろそろお祭り、行く?」

「あ、うん、そうだね」

涼太は、手にしていたかりんとうを口に放り込んで立ち上がった。

「ご馳走さまでした」

空いた湯呑みをお盆に乗せ、台所へ下げてくれる。

「涼太、ちょっといい? おばあちゃんが何か用意してくれてるみたいなんだけど……」


涼太を連れておばあちゃんの部屋に入ると、鴨居に2つ、和装ハンガーがかけられていた。

そのハンガーにかかっている布は……

「え、これ、浴衣っスか?」

「……うん、そう、みたい」

そう、浴衣だった。

でも、私は浴衣を持っていないし、勿論買った記憶もない。

「どうしたんだろ……これ……」



おばあちゃんが腰のエプロンで手を拭きながら部屋に入ってきた。

「さて、どっちから着る?」

「おばあちゃん、これどうしたの……?」

安いものには見えない。
さらりとした、なんだか上質な肌触り。

「いいでしょ? ばあちゃん、衝動買いしちゃった」

「いいでしょ、って……」

「オレのまで……スミマセン。ありがとうございます」

「ふふ、じゃあ黄瀬さんから始めようかね」

おばあちゃんは、とても嬉しそうに腕を回した。





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