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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


その……目は……
その……表情は。

私の中に入りたいと誘惑する時の……
私の中に、入っている時の……顔。

なんで、そんな顔をしているの、涼太?
まるで密室に2人きりでいる時のような。

熱を持った瞳に、魂を抜かれそう。

更にいやらしく動く彼の指に、どうしようもなく身体の中心が……ナカが、疼く。

触れているのは手なのに。

それなのに、裸で抱き合っている時のような、全身を愛撫されているようなその動きに、喘ぎ声が漏れそうになる。



涼太……なに、なに、どうしたの……?

やめて……

も、これ以上触れないで……

おかしくなっちゃうよ……



「黄瀬、なんか頭ボーッとしねえ?」

「!!」

青峰さんのよく響く声に驚き、大袈裟なくらいに肩をビクリと上下させてしまった。

「あー……時差ボケじゃないっスか?
オレも、変な感じ」

変な感じって……これは、こんなことしてるのは時差ボケのせいじゃないよね!?

爪や、水かきの部分をすりすりと擦られるだけで、ゾクゾクと背筋を甘い快感が走っていく。

ずっと国内にいた私の頭の中が、一番ボーッとしているんじゃないか。





逢いたかった……



涼太の声が聞こえて来そうな愛撫。
うん、これはもう、愛撫だよ……

私だって、逢いたかった。
寂しかった。

触れたかった。
声を聞きたかった。

絡んでいる涼太の左手と私の右手。
彼の小指を、私の小指の腹で
すり、と擦った。

私だって、あなたが、欲しい。


涼太の手がピクリと反応した。

「おー、待たせたな。
たい焼き売ってたから買って来たぞ」

さつきちゃんのお父さんが、何やらガサガサといくつかビニール袋を持って戻ってきた。

「わあ! おじさんありがとう!」

「っす、いただきます」

前のふたりがそう返事すると、たい焼きが入っているらしい袋が後ろまで回ってくる。

「あ、ありがとうございます…いただきます!」

それからたい焼きを食べている間もずっと……結局、神奈川に帰り着くまでその手は握り締められたままだった。



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