第70章 特別
腕の中にスッポリと収まる細い身体。
重なる2つの唇は徐々に熱を帯び、深く、浅くと異なる感触を堪能するように重なり合っていた。
強く抱え込んだせいで乱れている髪の感触。
柔らかくて、でも段々と汗ばんできているのがわかる。
その全てがオレを煽ってくる。
20㎝以上ある身長差も気にならない。
みわが背伸びをしてくれているのか、オレが彼女の足が浮くほどに抱きしめてしまっているのかは、分からない。
もう、そんなのどうでもいい。
とにかく、目の前のみわを味わう事に夢中で。
ねだるようにギュッとシャツを掴まれた細い指の感覚に、滾るような情欲は益々燃え上がっていった。
「っ……ふ……」
もう、頭が真っ白で
「オイ」
この柔らかい唇を
「オイっつってんだろ」
どこまでも……
「オイこの発情期の駄犬っ!」
突然後ろから物凄い力で髪を引っ張られた。
「イテテテテテッ!! なんスか!?」
振り返ると、そこには顔に青筋立てた青峰っちの姿。
「なんスかじゃねーよ! サカりやがって!」
あ。
周りを見渡すと、軽く人垣が。
ドラマの撮影かなんかと勘違いして、スマートフォンや携帯のカメラを向けている人までいる。
くたりと力が抜けてオレの胸に体重を預けている愛しい人を隠すように、カメラに背を向けた。
目の前には顔を真っ赤に染めた桃っちと、黒いからハッキリとは分かんないけど、同じく照れてるっぽい青峰っち。
ここが空港だということをスッカリ忘れていた。
みわを見た途端、吹っ飛んでた。
「オマエ、荷物放ったらかして行った時点で、海外ならもう盗まれてんぞ」
「あー……はは、確かに」
「オラ、行くぞ」
「……みわ、歩ける?」
「ん、大丈夫……」
若干ふらつくみわの肩を抱いて、桃井家の車へと向かった。