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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


"滅多にないチャンスなんだから、
私に連絡なんかしなくていいから!
むしろしないで! しちゃダメ!
現地での事に集中して!"

出国前にそう言われ、アメリカ滞在中は一切みわに連絡を取らなかった。

「だからソレ、浮気だって」

「青峰っち、ウルサイ」

「どーすんだよ、家に帰ったらベッドに他の男と……って」

「なんスかそれ、昼ドラの見過ぎっしょ!
みわはそういうトコはクールなんスよ、だからオレに逢いたいとは言わないの!」

本当は……寂しい。
いつも、もっと頻繁に連絡が欲しい。

理性なんて優先しなくていい。
オトナの対応なんかしないで欲しい。

無駄なメッセージでも、なんでもいいから。
オレに逢いたいって、そう言って。

「ふーん。クール、ねぇ」

オレたちは手荷物を受け取るためにコンベアの前で待機していた。

「青峰っちこそ、もう桃っち、この1週間でもう他の男に取られちゃったかも……いってぇ!」

理不尽な回し蹴りが飛んで来た。

「黙れ黄瀬」

「暴力反対!」

「お、来た」

目の前のコンベアに流れてきた自分のキャリーケースをひょいと持ち上げ、ギャアギャアと話をしながら2人で出口へと向かった。




「はあ、家までが遠いんスよね」

空港から家に帰るまでの乗り換え順を頭の中でおさらいして、ハアとため息をつく。

「青峰っちんとこも、1時間半くらいかかるんスか?」

青峰っちは、先ほどから何やらスマートフォンに目を落としている。

「お、さつきんちのオヤジが迎えに来てくれるってよ」

「そうなんスか?」

「オマエもいる事言ってあるから、横浜位まで送って貰えるんじゃね?」

「マジっスか! やった!」

疲れ切った身体になんと嬉しい待遇。

「んじゃオレ、なんか飲み物でも買ってくっス」

「おじさんはコーヒー、ブラックしか飲まねえぞ」

「了解っス。さすが幼馴染みっスね」

お互いの家族のことまでバッチリ分かってる、って……羨ましい。

オレは、みわに関して知らない事ばっかりだ。


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