第70章 特別
「はぁ、なんか1週間、あっという間だったっスね」
「まぁな」
オレたちは今、空の上にいる。
終着点は……日本。
190㎝を超えた男が2人並んでいるから、座席はかなり狭い。
青峰っちは、さっきから現地で買った英字新聞を広げて、顔に乗せたまま寝ている。
いや、返事があるから寝てはいないか。
赤司っちに教えてもらったアメリカでのバスケットボールキャンプ。
朝から晩まで本場でバスケが出来る、夢のような時間だった。
「どうだったっスか、感触」
「ん? ……正直、結構いけんだなって思った」
「……うん、オレも思ったっス」
確かに、レベルは日本に比べて格段に高かった。
だからと言ってついていけないかと言えば決してそんな事はなかったし、むしろやり甲斐があると思えるレベルだった。
まるで、キセキの世代の皆とプレーするような、あのゾクゾクするような感覚。
十分に通用するんだ、オレたちの力が。
滞在期間中、様々な国の様々な人たちに出逢えた。
言葉は通じなくてもボールを持っている間は、不思議と分かり合えて。
全く国籍が違う人間たちがランダムでどんどんコートに入ってチームを組んでも、違和感なくプレーが出来た。
バスケの力の偉大さを改めて感じた。
夜は皆で集まって身振り手振りを交えながらコミュニケーションを取って。
アドレスも何人かと交換した。
「黄瀬オマエ、進路どーすんの」
「いや……ちょっと練り直しっスわ……」
去年の夏、Jabberwockと試合をしてから世界がグッと近くなったような気がしたけど、今はもっともっと……現実的な気がする。
挑戦してみたい。
世界に。
……この話を聞いたら……みわはどう思うだろうか……。
みわ……。
「はぁ……みわに、逢いたい」
「あぁ?」
「1週間、連絡禁止令出されてたんス」
「んだソレ、神崎浮気してんじゃねえの」
「し、してないっスよ!」
「どーだか」
「……青峰っち、なんか機嫌悪くないスか?」
「テメーに関係ねーだろ」
「桃っちと、なんかあった?」
今まで微動だにしなかった新聞がカサリと動いた。
青峰っちは分かりやすいっスね……。