第70章 特別
「さつきちゃん、青峰さんと付き合ってたの……!?」
いつの間に。
知らなかった。
……でも、青峰さんはずっとさつきちゃんの事が好きだったんだから、不思議な事でもないけれど……。
「え、付き合ってないよ!」
ええ!?
ではなぜ、そんな話になるのか。
「さつきちゃん、ごめんね。
良ければ経緯を教えて」
「……IH決勝……の日……試合後に……
ろ、ロッカールームで……大ちゃんが、
私の事"女として見てる"って……」
わあ、わあ、青峰さん! やった!
手を叩いて喜びたい気持ちを抑えて、うんうんと頷いて返した。
どうしても無意識に彼を応援してしまう。
「うん、それで? なんてお返事したの?」
「返事……できなくて……だって私、そういう事……したこと無いから……」
ん?
「待って? さつきちゃん? えっと……
付き合う、事にしたんじゃなくて?」
「違うよ、大ちゃんは付き合うとかじゃなくて、女として見てるって……つまり、そういう事する対象で見てるって事だよね?」
それは……そういう対象で見てるっていうのは、好きなら当然じゃないかと思うけれど。
「うん、それはそうなんじゃないかな」
「私、そんなの怖いから、断っちゃったの」
…………
うん?
「さつきちゃん……その、女として見てる、っていうのは……好きだから付き合って欲しい、って意味じゃないの……?」
さつきちゃんは、それを聞くとひっくり返りそうなほど驚いた。
「ええ!? そんな事、言ってなかったよ!」
さつきちゃんのその反応に、私もひっくり返りそうなほど驚いた。
涼太の事で色々相談した時には、あれだけ的確なアドバイスをくれたりするのに、本当にどうして自分の事だとこんなに鈍感なの!?
「……断っちゃったの……?」
「うん、驚いて、凄い勢いで断った」
「…………」
「だって、だって……!」
「さつきちゃん、青峰さんと付き合う気はないの?」
「……か、考えたこと、なかった」
そうだろうか。
さつきちゃんも、青峰さんの事、かなり気になってたはずだけど……。