第70章 特別
「ごめんね、ごめんね、みわちゃん」
「ううん、こっちこそ、いきなり泣いてごめん……」
さつきちゃんを困らせてしまって、何してるんだろ。
「全然参考にならないでしょう。
私……恋愛なんて、した事がなかったから」
全部、涼太が教えてくれた気持ちだから……。
それに、コイバナが出来るような友達だってずっといなかった。
今はあきやさつきちゃんがいてくれるけど。
「そんな事ないよ。……やっぱり、2人が羨ましい。私なんて、どうしたらいいか分からなくて……」
「何かあったの? さつきちゃん……」
さつきちゃんは、耳を真っ赤にして俯いている。
「みわちゃん……その、初めて、の、時って、どんな感じだった……?」
「……え?」
「だ、だから、きーちゃんと……初めて……そーゆーことした時、の、ハナシ」
「そ、そーゆーこと?」
そーゆーことって、どーゆーこと???
さつきちゃんが何を言いたいのか、イマイチ掴めない。
「だっ、だから……! キス、とか、エッチ、とか」
「えっ、ええっ!?」
酷い鼻声で上げた驚きは、遠慮なく部屋中に響き渡ってしまう。
「ど、どんな感じ……って……?」
恋愛に関して、こういうふんわりした感じの質問って、正直困ってしまう。
「い、痛い、とか、こ、怖い、とか」
「さつきちゃん? 本当に、どうしたの…?」
さつきちゃんにしては珍しく、ハッキリしない態度。
まるで壊れたロボットだ。
「だ、だって、大ちゃんが……」
「へ」
青峰さんが?
「だっ、大ちゃんがそういう事しようって、言うから……!」
「えっ……ええええ!!?」
突然の方向転換に、驚きで涙も引っ込んだ。