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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別




「みわちゃん、コ、コイバナしよう」

涼太と青峰さんがアメリカのバスケットボールキャンプに発ってからもうすぐ1週間。

明日朝、2人は帰国する。

さつきちゃんのお父さんが空港まで車を出してくれるということで、折角だから前日から泊まりに来てよ! と誘われ、私はまた桃井家にお邪魔している。

そして、良い香りのアイスティーを挟んで、神妙な顔つきでテーブル向こう側のさつきちゃんが放った冒頭の一言。

さつきちゃんの部屋は一見女の子らしい物が沢山置いてある。

けれど、本棚は全てバスケットボールの本やDVDだし、よく見るとバスケ関連の物ばかりだ。

さつきちゃんは見た目によらず、恋愛には疎いらしい。

……人の事、言えないんだけどね。

「え、コイバナ? 私、そういうの詳しくないよ……?」

「でも、みわちゃんはきーちゃんから色々仕込まれてるだろうから」

「し、仕込まれてるって……」

火の輪くぐりのライオンにでもなった気分?

「ねえ、みわちゃんはきーちゃんのどこが好きになったの?」

「え……ええッ!?」

コイバナって、さつきちゃんの相談に乗るんじゃないのっ!?

「ど、どこって……」

「顔?」

涼太の顔がぽわんと浮かぶ。
どこに居ても、鮮明に思い出せる。

「か、顔も好きだよ。カッコいいし……。
でも、最初はそういうんじゃなくて……」

「うん、うん」

どこが好きになったか、って……?

私が……

涼太の……?





初めて出逢ったのは、電車の中だった。
痴漢に遭って、怖くて何も出来なかった私を助けてくれた。

あの時は正直、自分の事でいっぱいいっぱいで、そんな余裕なんてなかった。

綺麗な人にみっともないところを見られて、自分がより惨めに思えた。

涼太は電車に乗る時は優しく庇ってくれて……。

同じ男の人でも、こんな人も居るんだって、思った。

男の人は、女を力でねじ伏せて、自分の欲を吐き出したいだけの生き物だと思っていた。

でも、彼は違った。

初めて触れた、彼の優しさ。




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