第70章 特別
それはまるで、宝石の涙。
琥珀色のその瞳から零れ落ちる涙が、キラキラ、キラキラと美しくて、目を奪われる。
涼太が、泣いている。
はじめは声も出さずに。
でも、それは次第に……
「……あ……っ……あああ……」
声を上げて泣く涼太を、ずっと抱きしめていた。
「……涼太。ありがとう……」
「……っ、みわ……」
涼太が、私の身体を強く引いて、唇を合わせてきた。
こんな風に、試合後に求められたのは初めてだ。
キスの合間に漏れる嗚咽。
ベンチに身体ごと押し倒され、何度も何度も繰り返される口づけ。
重なる冷たい唇から、頬に落ちる温かい涙から、彼の想いが流れ込んでくる。
とめどないその想いを受け止めているうちに、私も泣いていた。
良かった。
あなたが泣ける場所でいられて、良かった。
泣いて。
今は、沢山泣いて。
最後に笑えば、いいんだよね。
ロッカールームに響く、ふたりの泣き声。
高校最後の夏の大会は、
……こうして終わりを告げた。