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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


頑張った。

頑張ったよ。

リードされたって、諦めなかった。

リードしたって、油断しなかった。

最後の最後まで、諦めずに走った。

誰よりも大きな荷物を背負いながら、誰よりも。





涼太の肩が、震えている。
必死に耐えているのが分かる。

「……涼太……」

頭を包んでいた手を離し、しゃがんで涼太と同じ目線になるようにした。

力無く腰に回されていた彼の腕は、私の肩へスライドされた。

眉間に皺を寄せて、ギリギリと歯を食いしばっている。

やはり、涙は流れていない。
そっと両頬に触れた。


「涼太……今は誰も、いないよ」

合わせたその目はどこか虚ろで、生気がない。


「……オレ、また……勝たせられなかった」

薄く開いた唇が、ぽそりと告げた。

「……エースは……チームを勝たせるのが仕事。
オレは……エースとしても、キャプテンとしても、何も……出来なかった」

「……そんなこと、な」

「最後……最後の青峰っちのシュートだって……オレが、オレが止めていれば!!」

「……」

「その前のプレイだってそうだ、確実に2点じゃない、あの時は外から3点を狙うべきだったんだ!!」

それは、喉が張り裂けんばかりの叫び。

「その前だって……ミスをしたメンバーに、もっとかける言葉があった筈だ!!」

全て自分で背負い込もうとしている涼太。

「オレが、オレがもっと…………!!」

乾いた唇にそっと自分の唇を重ね、塞いだ。

冷たい。

「涼太……そんなに自分を責めないで……」

「……っ……」

「あなたは、あなたがコートにいるだけでどれだけ周りの皆が安心するかを、知らないんだね」

私たちが1年生の時のウィンターカップ、誠凛戦だってそうだった。

あなたが怪我をおしてコートに戻って来た時の皆の表情、忘れないよ。

「苦しい時に、どうにもならない時に絶対に助けに来てくれる」

その、真っ直ぐな瞳で。

「あなたの背中を見て、皆、勇気を貰うんだ」

あなたは、希望なんだ。
以前、黒子くんも言っていた。

「涼太、あなたは……最高の選手だよ」


涼太の瞳から、涙がぽろりと零れた。



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