• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


「ハッ……勝った気が……しねぇな」

青峰っちが震える手を伸ばしてくる。

「……負けは、負けっスよ」

オレも、力の入らない手でその手を握った。




整列が終わり、各選手がベンチへ去っていくと、コートの中に残っているのはオレたちだけになった。

すぐに、表彰式の準備が始まるだろう。

走り慣れたコートが、なぜだか物凄く広く感じた。



応援席へ一礼をし、ロッカールームへと向かっていく。

観客席からも、ベンチからも啜り泣きが聞こえてくる。



悔しくて、悔しくて仕方がないのに、何故だろう……涙が流れて来ない。

皆、泣いているのに。

優勝した桐皇のメンバーも。
負けたウチのメンバーも。

オレを両端で支えてくれている笠松クンと小堀クンも、ボロボロと涙を流している。

その2人の頭を掴むように支え、言った。


「借りは冬……返すっスよ」


それは、かつてオレが尊敬しているセンパイにかけて貰った言葉。

今度は、オレが後輩たちにかける番。

あの時の笠松センパイも、こんな気持ちだったのかな。


「全国2位だ。胸張って……帰ろう」


「ハイィッ……!」


あの時、センパイは泣いていなかった。
オレも、涙は出なかった。


ベンチでは、既に皆が荷物をまとめ、撤収準備をしている。

オレの荷物は、誰かが先に持って行ってくれているようだ。

「すぐに表彰式だから、荷物を置いたらここに戻ってきてね!」

メンバーに指示を出しているみわと目が合った。

目の縁が赤くなったみわが、労うように優しく微笑んでくれる。


その表情を見て……
やけに鼻の奥が、ツンと痛んだ。


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp