第70章 特別
1点差でリードしている。
それはつまり、1ゴールでも決められれば逆転されるということ。
青峰っちのシュートはリングに当たり、リングの外へと弾かれた。
まだだ。
まだ数秒の時間が、ある。
まだ桐皇の逆転は不可能では、ない。
あのリバウンドを取らなければ危険だ。
崩れた体勢を立て直し、ゴール下へ走る。
青峰っちは、シュートの瞬間に体勢が傾き、転倒していた。
既に、両チームのセンターがリバウンドを奪うべく、長い手を伸ばし高く飛んでいる。
このボールを、取らなければ!!
コート内の全員が、そう思っていた。
刹那。
ボールはリングへと吸い込まれていった。
桐皇の3年センターの選手が、なんとかチップアウトをしようと無我夢中で伸ばした指先がボールに触れ、図らずもゴールに繋がったのだ。
湧き上がるコート内の選手と会場。
まだだ。
まだ、諦めない!
オレはボールを奪い、持てる力の全てを使って、走り出した。
「走れ!! まだ、終わってない!!」
その声に反応し、走り出す仲間たち。
しかしその直後
無情にもブザーが鳴り響いた。
試合、終了の。
あんなにも近かった歓声が、遠くなる。
遠退いていく。
負け……た。
負けた、のか。
オレたちは……また、負けた のか。
限界まで酷使した足は、もう動いてはくれなかった。
オレは笠松クンと小堀クンに支えられて、整列をする。
青峰っちも、桜井クンに肩を借りてようやく立っている状態だった。
どちらの学校の選手も、皆涙を流していた。
しかし、両者のその涙の意味は全く異なるもの。
天国と、地獄。
優勝と、準優勝。
ある広告にあった。
準優勝は、敗者だと。