第70章 特別
ファイナルは日本の高校生レベルを遥かに超えるものだった。
黄瀬涼太と青峰大輝
類稀なる才能のぶつかり合いは、観客も思わず声を出すのを忘れるほどの勢いと迫力。
往年のNBA名選手 マジック・ジョンソンとラリー・バードの試合を彷彿とさせるものであった。
まさに、宿命のライバルともいえる2人。
この試合の結果がどうであれ、来月の月刊バスケットボールでは、この2人が誌面を大きく飾るだろう。
第1Q・第2Qこそお互いに出方を伺うような試合運びであったが、第3Qからは各チームのエースが火を噴いた。
涼太が完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)を使い、ディフェンスを切り裂くような攻撃と、電光石火の動きで相手ボールを奪う守備。
まさに獅子奮迅の大活躍だ。
そして持ち前の器用さで、多彩なシュートを決め続けた。
また、特筆すべきは、基礎能力の向上。
以前までは完全無欠の模倣に頼りすぎるきらいがあったが、涼太個人のスキル向上により、彼オリジナルのプレーの幅が広がっていたのである。
対する青峰さんもゾーンに入り、疾風怒濤の如く応戦した。
もはや彼の中に"油断"や"驕り"などという言葉は存在しない。
まさに、全力。
そして何より驚いたのは、2人のゾーンの持続時間。
涼太は第3Qの後半からゾーンに入った。
青峰さんは、第3Q、第4Qを丸々ゾーン状態で居られるという驚異のポテンシャルを見せていた。
……いや、これはお互い、相手が"彼"だからかもしれない。
自分の前に立ちはだかるのが"彼"だからこそ、持てる力の全てを振り絞っているんだろう。
コートの中では、取っ組み合いの点取り合戦が再び行われているのである。
「100点ゲーム」という言葉を嘲笑うかのようなハイスコア。
第4Qの後半にもなると、電光掲示板には
134 対 133
と表示される事態となった。
海常のリード。
第4Q、残り5秒。
青峰さんが涼太のディフェンスをなんとかかいくぐり、バランスを崩しながらも放ったシュート。
このシュートの行く末が、試合を決める。