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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


「なんの説得力もないけど、開けるなら……卒業してからの方が良くないっスか?
これから受験もあるし」

「受験……そっか……そうだよね」

みわはうーんと考え出した。
珍しく、突発的な発想だったらしい。

「それまでに良さそうな病院探しといてあげるっスよ」

「え……」

彼女は驚いたような顔。



「あ、もう病院は決めてるんスか?」

「……涼太は、どうやって開けたの?」

懐かしいな。
開けたのは8月の暑い時期だった。

度胸試し的に一発と……。

「オレは自分でピアッサー買って、バチンと」

みわは再び枕元を探った。

戻ってきた彼女の掌に乗っているのは、未開封のピアッサー。

「……自分で開けるの?
ちゃんと消毒してくれるし、質の良いファーストピアスも貰えるから病院の方が良さそうっスけど……」



「……涼太に、開けて欲しい、の」

……

……こんな大事な耳に穴を開けるのに、素人のオレがやっていいんだろうか……。

「オレに? ……やっぱり、ちゃんと病院で」


「涼太……開けて」

う、か、可愛い。

こんな、こんな声と上目遣いで頼まれたら……。

「……分かったっス。
じゃあ、卒業式の日に開けてあげる。
それまで、このピアスとピアッサーは預かるっスよ」

「ありがとう、涼太」

ふにゃりと笑うのはいつものみわ。
はぁ。チョロいな、オレ。

でもまた、彼女との約束が1つ出来た。

柔らかい彼女の耳朶を再びぷにぷにと触る。
ここに、オレが穴を開ける……。

なんだか、今からキンチョーしてきたな……。

「なんか、重大任務っスわ」

「ふふ、気楽にお願いします」

あ、また、花が咲いたような笑顔。

みわは、本当に表情が豊かになった。

初めて電車内で会った時、恐怖に満ちた表情。

学校では、微笑むことがない固い表情。

マネージャーをやるようになって、暫くしてから笑顔も増えてきて。

少しずつ、少しずつ変わってきたんだなと思う。

オレも、みわも。



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