第70章 特別
熱を帯びた2人の濡れた吐息が、部屋の湿度を更に上げている。
ただただ、みわの事だけを感じて交わった。
大切にしたい、優しく抱きたい。
それだけ。
余計な事まで考えてしまったのが良くなかった。
自分を良く見せたいなんて、幻滅されたくないなんて考えてしまっていた自分が居たんだと思う。
あんなに反応しなかったのが、嘘のようだ。
みわに愛され、硬さを増したオレ自身は、みわと溶け合うように繋がった。
ひたすら、みわの熱を感じていた。
「みわ……最後までゆっくりしちゃったけど……物足りなくない?」
紅潮した頬に触れると、みわは潤んだ瞳で首を横に振った。
「ちゃんと、きもち……よかった……よ」
「……なら、良かったっス」
みわは、ゆっくりと身体を起こして枕の下を探り始めた。
「あの、ね……涼太」
「ん?」
「これ、なんだけど」
みわが取り出したのは、小さな箱。
中から出て来たのは、さっきオレが貰ったピアス……?
いや、貰ったピアスは今オレの左耳についている。
「あれ? それ、オレに買ってくれたやつ……じゃ、ないよね?」
みわは、少し躊躇うようなそぶりを見せてから頷いた。
「涼太のピアスの、もう片方なの。
……これ、私つけようかなって思って……」
そうか。
なかなか片耳だけって売ってないっスもんね。
……ん?
「……つけるって、みわが?」
「うん」
「穴、開けるってこと?」
「……そう」
「え、ええ!? ダメっスよ、高校生が!」
「……涼太が言っちゃう? それ」
「どこに、どこにつける気?」
「左右、どちらかは決めてないんだけど……」
みわの柔らかい耳朶に触れる。
「ぁ……」
「ここに穴……」
ホントに、どの口が言ってんだって思われそうだけど……。
「みわのキレイな身体に傷付けるみたいで……なんか、嫌っスね……」
みわのお父さんにでもなった気分だ。