第70章 特別
「ごめん、なんか緊張してんのかな……」
「……いいの」
みわがオレの腕に自分の腕を絡みつかせてくる。
まだ、オレの頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「……ごめん」
みわにガマンさせてる。
オレだって……みわを抱きたい。
でも、今日に限って気ばかり焦る。
今さら童貞でもないのに、なんで……。
もう、どうしたらいいんだよ。
「こうして、くっついてるだけでいいよ。
ね、もう謝らないで」
みわ、どうして責めないんスか。
だらしないって、怒ってもいいのに。
「……ごめん。
オレ……したくないわけじゃないんだ。
むしろ、その逆なのに、なんで……」
「じゃあ、少し休憩しよう? お喋り休憩」
気を遣ってくれているみわの優しさ。
……ホント、情けない。
黄瀬涼太がこんなんじゃ、幻滅される。
みわが好きすぎて、うまくやらなきゃって、そう意識しすぎてしまったんだろうか……。
まさかこんな事が起こるなんて。
2度と勃たなかったらどうしよう、なんて不安まで頭をよぎる。
「りょーた」
みわが両手でオレの頬をつまんだ。
「あ、スゴイ顔」
くすくすくす、と笑うみわ。
こころがあったかくなる笑顔。
「ごめん、オレ、みっともないばっかトコ見せて……」
今度は、鼻をつままれた。
「ふふふふ」
みわは楽しそうだ。
誤魔化そうとしてくれているの、だろうか。
「……みわ」
「みっともなくなんて、ないよ」
「え?」
突然、真剣な表情に戻った彼女がそう言った。
「涼太は、いつも私のことばかり考えてくれるから……もし、プレッシャーになってしまっていたら……ごめんなさい」
「違うんス。
プレッシャーとか、そんなんじゃなくて……
自分でも、なんでこんな」
「涼太」
頬にみわの唇がそっと押し当てられた。
「……好き、涼太」
まさかの不意打ちに、心臓が跳ねる。
「大好き、涼太」
その言葉が、胸に沁みこんでくるみたいだ。
「……オレも、好きだよ……みわ」