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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第69章 特別


「なんの説得力もないけど、開けるなら……卒業してからの方が良くないっスか? これから受験もあるし」

「受験……そっか……そうだよね」

みわはうーんと考え出した。
珍しく、突発的な発想だったらしい。

「それまでに良さそうな病院探しといてあげるっスよ」

「え……」

彼女は驚いたような顔。



「あ、もう病院は決めてるんスか?」

「……涼太は、どうやって開けたの?」

懐かしいな。
開けたのは8月の暑い時期だった。

度胸試し的に一発と……。

「オレは自分でピアッサー買って、バチンと」

みわは再び枕元を探った。

戻ってきた彼女の掌に乗っているのは、未開封のピアッサー。

「……自分で開けるの? ちゃんと消毒してくれるし、質の良いファーストピアスも貰えるから病院の方が良さそうっスけど……」



「……涼太に、開けて欲しい、の」

……

……こんな大事な耳に穴を開けるのに、素人のオレがやっていいんだろうか……。

「オレに? ……やっぱり、ちゃんと病院で」


「涼太……開けて」

う、か、可愛い。

こんな、こんな声と上目遣いで頼まれたら……。

「……分かったっス。じゃあ、卒業式の日に開けてあげる。それまで、このピアスとピアッサーは預かるっスよ」

「ありがとう、涼太」

ふにゃりと笑うのはいつものみわ。
はぁ。チョロいな、オレ。

でもまた、彼女との約束が1つ出来た。

柔らかい彼女の耳朶を再びぷにぷにと触る。
ここに、オレが穴を開ける……。

なんだか、今からキンチョーしてきたな……。

「なんか、重大任務っスわ」

「ふふ、気楽にお願いします」

あ、また、花が咲いたような笑顔。

みわは、本当に表情が豊かになった。

初めて電車内で会った時、恐怖に満ちた表情。

学校では、微笑むことがない固い表情。

マネージャーをやるようになって、暫くしてから笑顔も増えてきて。

少しずつ、少しずつ変わってきたんだなと思う。

オレも、みわも。



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