第70章 特別
涼太が今日少し変なのは、寮にお邪魔した頃からなんとなく気付いていて。
私に触れる指が、唇が、震えていた。
最初に彼に抱かれた時。
2回目の「ハジメテ」の時。
……さりあさんの事があった時。
どの時とも違う感覚。
あきが教えてくれたけど、男の人は女よりもずっとずっと繊細なんだって。
もしかしたら、私が何か傷付けるような事を言ってしまったんだろうか。
私がして貰ってばかりだから、萎えてしまった?
でも、涼太が焦って自分で大きくしようとしているのを見て、切なくなって。
不覚にもドキリとときめいてしまった。
完璧じゃない、涼太。
いつもは、どこで覚えてきたのかというくらい巧みな技で攻められるけど……。
もちろん、いつもの彼に不満があるわけでは決してなくて。
でも、今日の涼太は完璧じゃなくて……
泣いたり、笑ったり、焦ったり。
ふたりきりだからこそ、見せてくれているの?
私の前だから、そんなになっちゃうの?
自惚れて、いいのかな。
そんな彼が見れて嬉しい、って思ってもいいかな。
"好き"
2人で交わすこの言葉が、こころをあったかくする。
……そもそも私だって、今日は予定外な事ばっかり。
ベランダでプレゼントを渡すのも、大好きなお月様が力を分けてくれるかと思って、2人で見た星たちが見守ってくれているかもと思ってあの場所にしたのに、すっかり曇っているし。
結局、涼太に見られちゃうし。
詰めが甘すぎる。
でも、完璧じゃなくて、いいよね。
人間って、そんなに完璧じゃないよね。
涼太に、それが伝わればいい。
それだけ、伝わればいいの。
何度も頬へ優しいキスを落とした。