第70章 特別
みわの唇がオレの唇から離れたあと、そっと瞼に触れ、頬に触れ、鼻に触れ。
優しく繰り返される愛撫のようなキスに、目を瞑って身を任せていた。
多分、みわも戸惑っているんだろう。
オレだって、おかしいって自覚がある。
好きすぎて、もうどうしようもないんだ。
でも、それを言ってもこの気持ちの1割も伝わる気がしない。
どうしたらいい?
頭の中がまとまらないまま、みわの華奢な身体を両腕の中に閉じ込めた。
鼻を擽るシャンプーの香り。
嗅ぎ慣れたみわの匂い。
それだけで心臓が張り裂けんばかりに躍って。
みわは少し躊躇った後、細い腕をオレの背中に回してくれる。
それが嬉しくて、でもこんな風になってしまう自分が情けなくて、暫くそのまま抱擁を続けていた。
どのくらい経ったか、みわの体温をしっかり受け止められる程度には冷静になったところで、ようやく解放してあげられた。
みわはやはり、少し心配そうな顔。
「涼太……ごめんね、疲れてる?
今日はもう、帰る?」
心配をかけるつもりはないんだ。
心配なんて、かけたくない。
「ううん、大丈夫っス。
……予定通り、泊まって行きたい」
なんて面倒臭いヤツだと思われるだろうか。
……いや、みわはそんな事、思わない。
みわの気持ちは、痛いほど伝わってくるから。
「……無理、しないでね」
オレを気遣うように微笑むみわが好きだ。
「お風呂、入っちゃおうか」
照れたように目を逸らすみわが好きだ。
みわの全てが、欲しい。