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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


みわから受け取ったのは、……恐らく白くて、小さな紙袋。

室内から届くわずかな光で中を覗き込むと、小さな箱が入っているようだ。

「……これ、開けていいんスか?」

「うん」


箱を取り出すと、見た事がない花のような結び方のリボンがかかっている。

うーん、でもやっぱり暗くてハッキリ見えない。

「ここで、開けた方がいいんだよね?」

「うん、そうなの」

「じゃあちょっと失礼……」

人差し指と親指でリボンを掴み、しゅるりと音を立てながらほどく。

リボンは落とさないように、紙袋に入れた。

さて、いよいよ箱を開けると……。



小さな箱の中央に、丸い輪のようなものが収められている。


これは……


「ピアス……?」


「……そ、そう」


「うわ、嬉しいっス。
明るいトコでよく見たい」

「だ、だめ。今ここで、つけて」

「?」

変なことばかり言うんスね?

「それか、家に帰ってから、見て」

「んん、じゃあ今つけるっス」

「……箱、持つね」

みわに箱を持っていて貰い、自分が今左耳につけているピアスを外し、紙袋に放り込んだ。

箱からみわが買ってくれたピアスを手に取って、よく目を凝らすがやっぱりハッキリとは見えない。

留め具を外し、左耳の穴にピアスを差し込んで、後ろから留める。

毎日やっている行動だ。
これくらいは鏡を見なくても楽勝。

「どう?」

指で触った感じだと、サイズ感は今までしていたものと殆ど変わりない。

若干、新しいピアスの方が厚みがあるか。

同じような大きさの物を探してくれたんスね。


「……うん、いい、と、思う」

「……暗いから分かんないっスよね……」

仕方ない、後でゆっくり見よう。

でも、なんで見ちゃいけないんスか?

「ね、みわ……」




「黄瀬、涼太様」




視覚が奪われている中で、耳に真っ直ぐ届く、低く澄んだ声。


少し、震えている。




「……はい」

思わず、オレも神妙に返事をしてしまう。




「お誕生日、おめでとう」




「うん、ありがとう」


「……」


……?

しばしの間。








「涼太、私と付き合ってくれて、ありがとう。


……好きになってくれて、ありがとう」




みわの頬がキラリと光った。




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