第70章 特別
今日は貴重な梅雨の晴れ間。
でも、昨日まで降った雨が湿気となって身体に纏わりつくよう。
乾き切ったアスファルトの隅にある花壇の紫陽花には、まだ雨の露が残っていた。
涼太と手を繋いで帰る、帰り道。
……今日は涼太がなんか変?
さっきの……部屋でのキスだって、こう……なんていうか……淡白?な感じで……。
ううん、それはそれでいいの。
別に、激しいのをして欲しいとかそんなんじゃ、決して、なくって……!
……なんで自分に言い訳してるんだろ。
でも、いつもならもっと……。
…………。
私……なんかしてしまった?
でも……寮で待っててって言ったのは涼太だし……?
ハッキリとは分からないけど、なんだか、いつもと違う感じなんだ。
今、繋がれている手の力も、いつもより強い。
大きな掌に長い指……大好きな手。
あったかくて、頼りになる……手。
熱が、全部手に集まっているみたい。
恥ずかしくて、逃げたくなる。
涼太にも時々笑われる。
全然慣れないんスね、って。
いつも、もっと凄い事しているのに、って。
……で、でも、それとこれとは別!
なんだか、いつもより会話が少ないから余計な事ばかり考えちゃう。
だめだめ!
今日は、1回きりの涼太の18歳の誕生日。
グダグダ考えないで、精一杯お祝いしよう!
空回りしそうなほど気合いを入れて、おばあちゃんの家の門をくぐった。